混合気体の圧力

【混合気体】

 互いに反応し合わない気体どうしを,同温,同圧下で混合した気体を混合気体という。状態方程式などは気体の種類に関係なく成立するので,混合気体でもボイル・シャルルの法則,状態方程式をつかうことができる。

 

成分気体の分圧と混合気体の全圧

混合気体中の各気体を成分気体という。混合気体が示す圧力を全圧,成分気体がそれぞれ単独で,混合気体と同じ体積を占めると仮定したときの各成分気体が示す圧力を分圧という。混合気体の全圧pは,各成分気体の分圧pApB,・・・の和に等しい。これを分圧の法則(ドルトンの分圧の法則)という。

   p(全圧)pAAの分圧) + pBBの分圧) + …

 
 

【分圧とモル分率】

混合気体の全物質量nに対する各成分気体の物質量の割合(モル分率)という。混合気体の全圧に成分気体のモル分率をかけると,その成分気体の分圧が求められる。

 pAAの分圧) = p(全圧) × nA/nAのモル分率)

 

【混合気体の状態方程式】

 混合気体では,各成分気体について別々に考えることができ,状態方程式も別々に立てることができる。それらを合わせると混合気体の状態方程式になる。温度Tで容積Vの容器に入っている混合気体の成分気体を気体Aと気体Bとし,それぞれの分圧をpAPa〕,pBPa〕とすると,状態方程式は次のようになる。 

 

例題

27℃で,0.20 molの酸素と0.30 molの窒素を1.0Lの容器に入れた。容器内の全圧およびそれぞれの気体の分圧を有効数字3桁で求めよ。気体定数R=8.3×103PaL/(molK)

 

(解法1)酸素,窒素の分圧を求め,ドルトンの分圧の法則より全圧を求める。

(解法2)全圧をまず求め,次にモル分率から酸素,窒素の分圧を求める。

 

 解法1 O2N2で別々に状態方程式をたてる。

     pxV nxRTより, 

     pO2 nO2RTV = 0.20×8.3×103×3001.0 4.98×105Pa

     pN2 nN2RTV = 0.30×8.3×103×3001.0 7.47×105Pa

     p pO2 pN2 4.98×105 7.47×105 1.245×106 1.25×106Pa

 

 解法2 pV nRTより,

     p nRTV (0.200.30)×8.3×103×3001.0 1.245×106

1.25×106Pa

     pO2 p × nO2n 1.245×106 × 0.20(0.200.30) 4.98×105Pa

     pN2 p × nN2n 1.245×106 × 0.30(0.200.30) 7.47×105Pa

 

例題

27℃,1.0×105Paの窒素6.0Lと,27℃,2.0×105Paの水素2.0Lを内容積5.0Lの容器に入れ,全体を27℃に保った。窒素の分圧,水素の分圧,混合気体の全圧をそれぞれ求めよ。気体定数R=8.3×103PaL/(molK)

 

  (解法1)混合前の窒素,水素の物質量〔mol〕をそれぞれ求め,それをたして全物質量にして全圧を求める。モル分率から分圧を求める。(状態方程式を3回解く必要があり,面倒くさい)

  (解法2)混合前後で温度が一定なので,ボイルの法則より,窒素,水素をそれぞれ5.0Lにしたときの圧力を求める。これが分圧になり,たせば全圧になる。

 
 

解法2 

  N2の分圧 pV p’V’より,1.0×105 × 6.0 x × 5.0x 1.2×105Pa

  H2の分圧 pV p’V’より,2.0×105 × 2.0 y × 5.0y 8.0×104Pa

全圧 = 1.2×105 + 8.0×104 2.0×105Pa

 

例題

気体Aの分子量を求めるため,図に示す装置を使って,次のadの順序で実験をし

た。

(a) 気体の入った耐圧容器の質量を測定したところ,W1g
  〕であった。

 
 

例題

図のように,容積がA4.0LB5.0LC3.0Lがコックでつながっている。容器A,Bには,それぞれ2.0×105Paおよび3.0×105Paの水素を,容器Cには1.0×106Paのアルゴンを満たした後,容器間のコックを開いた。ただし,各容器の温度は一定に保たれているものとし,容器間をつなぐ通路の体積は無視できるものとする。気体定数R=8.3×103PaL/(Kmol)

 

(1) 全容器内の混合気体の中の水素とアルゴンの分圧は,そ
 れぞれ何Paか。

(2) 全容器内の混合気体の圧力は何Paか。 
 
 

例題

容積が1200mLの容器に,水素40mg, 塩素710mg, アルゴン400mgからなる混合気体が0℃に保たれて入っている。この容器に光をあてると水素と塩素が反応し,塩化水素が生成した。反応後の容器内の全圧が0℃で何Paか求めよ。気体定数R=8.3×103PaL/(Kmol)H=1.0, Cl=35.5, Ar=40

 

反応後に生成するHClの物質量を求め,反応後の混合気体を考える。反応式 H2 Cl2 2HCl なので,H21molCl21molが反応してHCl2mol生成する。この問題では,水素40r(=0.020mol)と塩素710r(=0.010mol)なので,HCl0.020mol生成し,水素が0.010mol余る。またAr400r(=0.10mol)は反応しないので,反応後の混合気体の成分気体となる。反応後の混合気体は,次のようになる。

 
 

混合気体のnmol)が分かるので,状態方程式より,p0.040×8.3×103×273/1.27.55×1047.6×104〔Pa〕 

<水蒸気圧に関する例題>

 ある一定温度のもと,密閉容器に水を入れて放置すると,水の一部は蒸発する。また,水蒸気の一部は凝縮し再び液体に戻る。つまり,このような容器の中では蒸発と凝縮が同時に起こっている。蒸発する分子と凝縮する分子の数が等しくなると見かけ上,蒸発・凝縮が起こっていない状態になる。この状態を気液平衡(蒸発平衡)という。

 
 

気液平衡の状態(飽和状態)では液体の水の量と気体の水の量の割合は一定なので,水蒸気の気圧はその温度において一定の値となる。この水蒸気の気圧を水蒸気圧(飽和水蒸気圧)という。

一定温度での気液平衡の状態では,水蒸気の圧力は水蒸気圧(飽和水蒸気圧)以上になることはない。

 

   

1 水蒸気0.30mol83Lの容器に入れ,27℃に保った。このとき液体の水は生じているか。生じている場合は液体の水の物質量を求めよ。27℃の水の蒸気圧を3.5×103Paとし,液体の水の体積は無視できるものとする。気体定数R=8.3×103PaL/(Kmol)

 
 

 0.30molすべて気体であるとすると,pV nRTよりp nRTV 0.30×8.3×103×30083 9.0×103Pa〕。 p 3.5×103なので,一部は凝縮して液体になっている。液体になった水は,pVnRTより,npVRT 5.5×103×83(8.3×103×300) 0.183 0.18mol

 
 

2 内容積10Lの容器に窒素0.10molと水0.10molを加えて密閉した。水の飽和蒸気圧を27℃では3.5×103Pa80℃では4.7×104Paとして,次の問いに答えよ。気体定数R=8.3×103PaL/(Kmol)

(1) 27℃における水蒸気圧は何Paか。 (2) 80℃における容器内の全圧は何Paか。

 

(1) 27℃において,0.10molの水がすべて気体であると仮定すると,状態方程式より,p0.10×8.3×103×300/102.49×104Pa〕。この値は,水の飽和蒸気圧を超えているので,液体の水が存在し,水蒸気圧(水の分圧)は3.5×103Pa〕。

(2)  80℃において,0.10molの水がすべて気体であると仮定すると,状態方程式より,p0.10×8.3×103×353/102.92×104Pa〕。この値は,水の飽和蒸気圧を下回っているので,すべての水(0.10mol)が気体である。よって混合気体は0.100.100.20mol,全圧は状態方程式より,p0.20×8.3×103×353/105.85×1045.9×104Pa

 

3 0.50molのメタンCH42.5molの酸素O2を,5.0Lの容器に入れた。容器内でメタンを完全燃焼させたのち,容器の温度を17℃に保った。容器内の全圧は何Paになるか。17℃での水蒸気圧を1.9×103Paとする。気体定数R=8.3×103PaL/(Kmol)

 

反応後の混合気体を考える。このとき,水が生成するので水の蒸気圧も考慮する必要がある。反応は,CH42O2CO22H2Oなので,CH4 1molO2 2molが反応してCO2 1molH2O 2molが生成する。この問題では,CH4 0.50molO2 2.5molなので,O21.0mol反応し(1.5mol余り)CO2 0.50molH2O 1.0molが生成する。

ここで,H2Oの分圧を考える。生成した1.0molがすべて気体であると仮定すると,状態方程式よりp1.0×8.3×103×290/5.04.81×105Pa〕。この値は水の飽和蒸気圧を超えているので,液体の水が存在し,水の分圧は,1.9×103Paになる。

反応後の混合気体は,次のようになる。

 
 

この場合,O2CO2の分圧を状態方程式より求め,水の分圧と足して全圧にするとよい。このとき,O2CO2の分圧は別々に求めるのではなく,まとめて2.0molで状態方程式に代入すると,p2.0×8.3×103×290/5.09.62×105Pa〕。全圧は,p(9.620.019)×1059.63×1059.6×105Pa